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【ネタバレ】小説「屍人荘の殺人」作品分析 

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こんにちは、ちぐです。

 

年末、帰省前にふらっと買った「屍人荘の殺人」。

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

 

 

今、神木隆之介くんや中村倫也さんが出演で映画化されている作品ですね。

shijinsou.jp

新幹線内で冒頭だけ読み、結局帰省中は全く手をつけなかったのですが、この前の占いでミステリ書くの向いてるかもよ!と言われたこともあり、やる気を出して最後まで読みました。というか続きが気になって一気に読み進めました。

最後まで読み終わると、好みかと言われるとそこまででもないけど、引き込まれて面白い小説だった!

 

というわけで、久しぶりになりますが分析。

いつも通りネタバレ炸裂なので、これから小説を読んだり映画を見たりされる方は回れ右で!

 

【あらすじ】

神紅大学ミステリ愛好会の会長・明智京介と助手・葉村譲は、ミステリへの情熱と事件解決への意欲を持ちながら、弱小サークルの会員として大学生活を過ごしていた。

夏休みが近く頃、「ペンションで行う夏合宿」というミステリにお誂え向きのシチュエーションを聞きつけた明智は、主催の映像研に参加を望むが、しつこく頼んでも断られてしまう。葉村も半ば諦めていた頃、同じ大学に通う探偵少女・剣崎比留子が現れ、ある取引を持ちかけられる。彼女と一緒に来れば、映像研が紫湛荘というペンションで行う、曰く付きの合宿へ行けるというのだ。剣崎からの交換条件は明かされないまま彼らは合宿へ参加するが、そこで想像を絶する極限的な事態に追い詰められ、さらに連続殺人事件が発生する。

果たして彼らはこの状況から逃れられるのか。そして殺人鬼の正体とは。

 

【起承転結・フック】

[起]ミステリ愛好会の二人、美少女に誘われ曰く付きの合宿へ行く

フック:

WHAT 合宿ではどんな事件が起こるのか

WHAT 美少女の出した交換条件とは

IF 美少女とロマンスはあるのか

 

[承]合宿場にゾンビ(近場のフェスでウイルスに感染し、屍人となった人々)が押し寄せ、明智が犠牲に。葉村と剣崎はその他の面々と紫湛荘に立て籠もる事になる

フック:

IF ここまで重要人物だった明智は復活するのか、死んだ(ゾンビになった)のか

IF ゾンビから逃れ、生き残ることができるのか

 

[転]逃げられない空間で極限状態に置かれた彼らに殺人鬼の魔の手が迫り、ゾンビによるものなのか、人によるものなのかわからないような連続殺人が起こる。

フック:

WHO次は誰が殺されるのか

WHO 犯人は誰か

HOW犯人はどのように殺人を犯したのか

IF WHEN バリケードはゾンビの侵攻に(いつまで)耐えられるのか

 

[結]4人が殺され、ゾンビの侵攻が進み、残り少ない逃げ場へ退避する彼らは、剣崎の推理により殺人事件の犯人を突き止め、救出される

ミステリ愛好会は葉村と剣崎の二人で続けていくことになる。

フック:

WHAT ゾンビを発生させる原因となった斑目機関とは何か

HOW 二人はどのようにミステリ愛好会を続けていくのか

HOW 二人の関係性はこれからどうなるのか

 

【テーマ】

ミステリなのであまりテーマに重きを置いていない感じがしたが、あえて言うなら、「恨みを買うような悪人にもそれなりのバックグラウンドがあり、悪事を働いたからといって殺して良いとは言えない」か。

 

【ログライン】

大学のミステリ愛好会に所属する葉村譲が、探偵少女の剣崎比留子によって曰く付き合宿へ参加し、ペンションがゾンビに襲われる中、連続殺人事件に遭遇する話

 

【対立構造】

・事件に首を突っ込もうとするが大した謎を解いたことはない明智x不可抗力で事件に巻き込まれ、今では多くの事件の謎を解いた剣崎

・女性関係にうぶな主人公葉村x女性関係が原因で殺される被害者たち

(↑意図的ではないのかも。あえて言うなら、かな…)

 

カタルシス

・犯人の判明

 

・トリックの解明

 

 ・明智さんとの再会

→うーん

一応再会できたのはよかったなと思ったけど、明智さんは探偵としての能力もそうあるわけでもなく、序盤で退場な割に序盤に大した見せ場も主人公と心通うシーンもないし、相棒を自分のものにしようと近づいてきた剣崎さんに最後はトドメを刺されるし、色々不憫すぎた。

 

【見所】

全体を通してわかりやすく叙述してあるので、トリックの前提となる状況や人物がとてもわかりやすい。

ゾンビがすぐそこまで迫っていると言う極限状態で、登場人物がどう時間を過ごしていくかと言うのがしっかり描かれていて面白い。(普通はもっとパニックになると思うが)

 

【個人的な感想】

・好み度★★★

文章がとても明快で読みやすく、 あまり読書をしない自分でもサクッと読めた。

トリックや誘導がしっかりしていて、最後まで犯人が誰か予想できない状況で進んでいったので、ずっと気になる気持ちのまま謎解きの過程を見ることができた。

 

また、全体を通してストレス耐性がしっかりしていたのがよかった。

ゾンビもの+殺人事件となり、あまりの極限状態にとっちらかりそうなものだけど、ゾンビの情報が割とあっさり明らかになること、ペンションに避難したメンバーが割と冷静なこと(すぐそこまでゾンビが迫ってるのに)、殺人被害者の候補が最初からだいたい決まっていたことなどで余計なことに悩む必要がなくなり、殺人事件とそのトリックに集中して読むことができた。

 

ただ、重要人物かと思われた明智さんがあまり活躍しないままに序盤で退場、最終的にゾンビとしてトドメを刺されて死ぬのはなかなか可哀想だった。。

主人公にとって明智さんは大事な存在だったようだけど、この小説だけではあまりその気持ちに共感できないし…

そもそも剣崎さんは葉村くんが助手に欲しいという動機で二人を誘ったわけだけど、ここで彼女に誘われなければ死ななかった明智さん。相棒も奪われるし、命も落とすし、不憫が過ぎる。。。

前日譚の小説が出ているようなので、それを読めばもう少し浮かばれるのかもしれないけど、死ぬ時のアッサリさを思うと複雑な気持ちに…。

 

あと気になったのは、犯人の動機がこの猟奇的殺人をするにはちょっと足りないような気がしたところ。もう少し動機に説得力が欲しかったと言うか、なぜそこまで恨みを持ったのかと言うエピソードを深掘りして欲しかった。その動機でこんな血まみれな殺しできる…?っておもた…

 

トリックなどの描写はとてもよくて読みやすく、ミステリ初心者にミステリ指南をしてくれるような内容もあって勉強になり、さらっと楽しく読むにはぴったりの作品だったと思う。

ただ、もうちょっとそれぞれの感情に迫って欲しかったな。それは続編でやるのかな。

そこだけやや残念でした。

 

以上、小説「屍人荘の殺人」作品分析と感想でした!